続・ 絶対に失敗しないMP矯正33の事 親知らずについて

動画内容

マウスピース矯正を成功に導く8番抜歯の5つの理由

一般的な歯科治療と異なり、矯正治療においては、治療計画の初期段階から親知らず（8番）の有無が、成否を大きく左右します。特にマウスピース矯正では、8番の取り扱いについて明確なルールを設けることが、失敗を回避するための必須条件となります。

1. 遠心移動の実現とスペースの確保

インビザラインによる治療計画では、IPR（歯間削合）や抜歯を避けたい場合に遠心移動が重要な選択肢となります。しかし、8番が残存している場合、この遠心移動は事実上不可能となります。動画では、8番抜歯によって7番が上顎で最大4mm移動できる可能性に言及し、これは小臼歯1本分のスペースを確保するに等しい効果があると解説。抜歯により7番の回転、傾斜、ルートトルクなどあらゆる移動の自由度が増し、結果的に6番の移動にも良い影響を与えます。

2. スキャン精度の確保と治療計画の確実性

iTeroなどの口腔内スキャナーによる正確な印象採得は、クリンチェックの確実性、ひいては治療の成功に直結します。7番遠心側のスキャンすら困難であるにも関わらず、8番が残存している場合、その遠心側まで正確にスキャンすることは困難です。スキャンされていない部位にフィットするマウスピースは作成できず、この部位の歯が動かない、あるいは想定外の動きをすることで、治療期間の延長や治療失敗につながります。出ている8番は100%抜歯と断言するのは、スキャン精度の担保が大きな理由です。

3. 7番歯周組織への悪影響回避

8番が萌出している、あるいは半埋伏の場合、う蝕（虫歯）や歯肉炎のリスクが高まります。特に7番遠心側の清掃性が悪化し、8番だけでなく7番にまで悪影響を及ぼす可能性があります。矯正治療中に口腔内環境が悪化することは、歯根吸収などのリスクも高めるため、事前に抜歯により口腔衛生状態を改善しておくことが歯科医師としてのセンスであり、責任であると指摘しています。

4. 訴訟リスクの低減

親知らずの抜歯を嫌がる患者の意向を汲み、抜かずに矯正を強行した場合、治療が失敗・長期化した際に訴訟リスクが高まります。動画では、「抜かないとうまくいかないから抜く」と明確に伝え、治療失敗を回避することが患者にとって最大の利益であることを理解させることが重要であると強調。歯科医師が責任をもって抜歯を完遂し、失敗のリスクを排除することが、信頼関係の構築と訴訟予防につながります。

5. 抜歯の基準と遠心移動の可否

抜歯の基準として、「萌出している8番は100%抜歯」とし、「完全埋伏の8番は遠心移動をしないなら非抜歯で良い」と明確に区別しています。ただし、遠心移動を計画する場合は、埋伏状態であっても抜歯が必要であるという、治療計画に基づいた戦略的な判断基準を示しています。この判断を誤ると、大臼歯部がロックされ、前歯の改善も困難になるため、事前の確実な判断が求められます。