講師紹介 堀尾 麻衣

- 堀尾 麻衣
- THDC合同会社代表
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口腔機能発達不全症の患者や保護者の多くは、現状に「困っていない」ことが最大の特徴です。そのため、歯科医療従事者が「正しさ」を一方的に説明する従来型の指導では、行動変容は起きません。
本動画では、医療的な教育を「同意を得るためのプロセス」と定義し、専門知識の伝達よりも重要な「傾聴(ニーズの引き出し)」のテクニックを詳述しています。 信頼関係を築く「場作り」から始まり、写真や質問を通じて「あれ?」という気づきを促すフェーズ、そして最終的に患者自身が選択肢から治療を選び取る「合意形成」までの具体的な会話術を紹介。
保険指導の定義に基づいた専門的指導行為の本質を学べる、臨床実践に即した内容となっています。
口腔機能発達不全症の指導において、患者や保護者が自ら「やってみよう」と思える状態を作るには、説明の順番が極めて重要です。動画では、教育としての説明を「感情層」「気づきの層」「教育・行動層」の3つの階層に分けて解説しています。
まず「感情層」では、安心感と共感を醸成します。保護者を否定せず、声のトーンを和らげ、共感を示すことで心理的防壁を下げることが、カウンセリングの出発点となります。 次に「気づきの層」では、質問の力を用いて問題を「自分ごと」化させます。
医療側が説得するのではなく、写真撮影などの客観的な評価を通じて、保護者自らが「口が開いている」「食べ方がおかしい」という違和感に気づく仕掛けを作ります。
最終段階の「教育・行動層」では、初めて具体的な医療情報やトレーニングの提案を行います。ここでのポイントは、歯科医師が正解を押し付けるのではなく、複数の選択肢を提示して患者側に決定権を渡すことです。
「同意」とは、単に頷かせることではなく、本人が「自分で決めた」と実感している状態を指します。自分で選んでいない行動は、短期的には実行されても、長期的には離脱や挫折に繋がるリスクが高まります。
「これなら続けられそうですか?」という問いかけを通じて、無理のない範囲からスタートさせることで、セルフケアの定着と重症化防止という保険指導の本来の目的を達成することが可能となります。
カウンセリングに入る前の段階として、まずは「観察」を徹底することが推奨されています。保護者がどのワードに反応し、どのような不安を抱えているのかを察知し、話しやすい空気を作ることが不可欠です。
医療従事者が抱く「違和感」をストレートにぶつけるのではなく、仮説を立てながら丁寧にニーズを掘り起こすプロセスこそが、口腔機能発達不全症における同意形成の鍵となります。 こうしたテクニックは患者をコントロールするためではなく、患者自身が持つ「良くなりたい」という力を最大限に引き出すための技術であり、今後の歯科医療における重要なあり方として示されています。
今回学んだ「感情・気づき・教育」の順序を意識して、次回の小児口腔機能管理の現場で実践してみませんか?
