1、今選ばれている「第二の永久歯・インプラント」

日本の人口は2010年を境に減少を続けており、2025年にはいわゆる「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が75歳以上を迎え後期高齢者となったことから、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会となっています。
1989年に始まった「8020運動(80歳で20本の歯を保つことを目標とした歯の健康づくり運動)」(※1)によれば、当時8020運動の達成者は10%にも満たないとされていました。
しかし、令和4年に厚生労働省が行なった「歯科疾患実態調査」(※2)によると、この割合は51.6%(推計値)にまで上昇していることが明らかになっています。
この8020運動の影響を受けて「80歳で20本の歯を保つために自分の歯を大切にしよう」という意識の向上が挙げられます。
8020運動が開始された当時と比べてみたところ、以下の変化が見られました。
・一日3回以上歯を磨く人が倍以上に増加
・デンタルフロスや歯間ブラシ等の清掃補助器具を使う人が増加
・定期歯科検診を受診する人が増加
・フッ化物配合歯磨きのシェアが増加
・年間砂糖消費量の減少
このような結果から見ても、人々の健康意識が高まっていることが分かります。
治療の過程において、残念ながら抜歯になってしまった場合の選択肢として挙げられるのが入れ歯、ブリッジ、そしてインプラントです。
厚生労働省が令和4年に行なった「歯科疾患実態調査」によると、インプラント装着者の全体割合は3.2%でした。
内訳としては70~74歳が最も多い5.9%、次いで80~84歳で4.9%、3番目は60~64歳で4.5%となっています。
また、平成28年に行われた「歯科疾患実態調査」(※3)ではインプラント装着者の全体割合は2.7%であったことから、徐々にではありますがインプラントを選ばれる方が増えていることがわかります。
昭和の時代においては「とりあえず入れ歯・ブリッジ」という選択が一般的でしたが、健康意識の高まりから、現在では「しっかり噛んで食べられる口になりたい」という将来を見据えた考え方へと人々の意識がシフトチェンジされ、中高年の方を中心にインプラントを選択される方が増えているのです。
2、日本のインプラントの歴史

「サファイアインプラント」というものをご存知でしょうか?
1978年に大阪歯科大で開発されたサファイアインプラントが、日本で初めて使用されたインプラントでした。
現在流通しているチタン製のインプラントとは違い人工サファイアを使用したこの治療法は、様々なトラブルが起きてしまったことから、現在では選択されていません。
チタンと違って人工サファイアではオッセオインテグレーション(骨結合)が起こらないため、埋め込んだサファイアインプラントが安定せず揺れ、強度が充分にないため骨に埋めたサファイアインプラントが折れてしまうなどのトラブルが多発したのです。
これらのトラブルにより「インプラントは危ない」というマイナスイメージが人々へ広まってしまいました。
1983年以降にチタン製インプラントが導入されてからもこのマイナスイメージからインプラントを否定する人が多く、日本でのインプラント治療の普及が遅れる一因となっています。
また、日本には世界的なインプラントメーカーがないことから、海外製のインプラントを使用して治療を行なうことが主流となりました。
現在のインプラント治療はもともとヨーロッパで誕生したこともあり、インプラントメーカーの分野ではヨーロッパに各メーカーの本社が集中しています。
世界4大メーカーと呼ばれているのは、スイスの「ストローマン」、スウェーデンの「ノーベルバイオケアー」と「アストラテック」、アメリカの「ジンマーバイオメット」で、全て欧米の企業です。
海外製のインプラントを使う場合、海外から取り寄せるため、その分時間がかかります。
また、海外製のため欧米人の骨格に合わせて作られているので、顎の骨が小さい日本人にはサイズが合わないというデメリットもあります。
インプラントのサイズが合わないとしても調整することはできますが、その分治療期間は長引いてしまいます。
日本のインプラントシステムの中で最も流通しているのが、京セラメディカル株式会社の「POIインプラント」です。
POIインプラントは京セラメディカルマテリアル社と神戸製鋼所それぞれの医療材料部門の統合によって設立された日本のインプラントシステムの中では最も歴史のあるものです。
日本国内のメーカーとしてはNo.1のシェアを誇るインプラントで、国内の歯科医院においてはノーベルバイオケアー社、ストローマン社に次ぐ3位の使用率となっています。
また、韓国でもインプラント開発はさかんに行われており、韓国のインプラントメーカーである「オステム」は世界第6位と大きなシェアを獲得しています。
世界70カ国以上で事業を展開するスイスのインプラントメーカー「ストローマン」の2020年の年次報告(※4)によると、世界で最もインプラントが普及しているのは韓国で、その普及率は約10%となっています。
韓国では国民全体の10人に1人がインプラント治療を受けているのです。
インプラント普及率は2位にイタリア、3位にスペイン、スウェーデン、アメリカと欧米諸国が10位以内にランクインしています。
気になる日本のインプラント普及率は3.2%で、世界ランキングでは14位となっています。
3.2%ということは、30人に1人の割合でインプラント装着者がいるという計算になります。
一日の診療のうちおよそ1人か2人はインプラントを装着している患者さんがいるという計算ですから、感覚としても間違っていないのではないでしょうか。
とはいえこうして世界に目を向けてみると、日本はまだまだインプラント先進国とは言えないのが現状です。
3、増加傾向にあるインプラントにまつわるトラブル

一方で、国民生活センター(※5)によれば、2013年から2018年の5年間で409件のインプラント処置に対する相談が寄せられ、毎年60~80件の相談が寄せられていると言います。
国民生活センターに寄せられた相談内容は多岐に渡っています。
「インプラント体の埋入深度が浅く外してやり直した」
「インプラント治療が原因で副鼻腔炎(蓄膿症)を発症したのに対処されない」
「定期検診を受けていたがインプラントが抜けてしまった」
このように、生活の質の向上を目指してインプラント治療を選択したはずがトラブルに発展してしまったという相談が寄せられているようです。
トラブルを招かないためにも、インプラント治療には高い専門性と高度な知識、そして広い視野が求められます。
4、インプラント治療に求められる高い専門知識を補強するために
平成26年頃から歯学生のカリキュラムに「口腔インプラント学」が盛り込まれましたが、これはあくまでも基礎的な内容です。
平成29年に行われた医療施設調査によると、公的医療機関や個人医院を含めた歯科診療所68,609件のうち、インプラント手術を実施している医院は24,014件となっています。(※6)
今、患者さんからは「よく噛むことのできる第二の永久歯・インプラント」を実現し、また信頼することができる「かかりつけ医」になることが求められています。
インプラント治療の第一線で活躍されている先生方の「生の声」を反映したこちらの動画をぜひご活用いただき、患者さんに選ばれる歯科医師への第一歩を踏み出してください。

インプラントという外科治療をされる歯科医師の先生方は、 インプラント治療のリスク についてお考えになったりお悩みになったりすることはないでしょうか。
ここでは インプラントを打つ際に知っておきたいリスクについて、鈴木先生に解説 していただきます。
その中で、 なぜリスクになるのか という原因にも触れていますので、ぜひご覧ください。
こんな方におすすめ
●インプラント治療を行っている先生
●これからインプラント治療を実施される先生
●リスクを最小限に抑えたインプラント治療を実施したい先生

日々の診療で感じるインプラント治療における印象、そして良き治療にもかかわらずトラブルが絶えない実情において、歯科界の展望からの考察と、データから見る天然歯とインプラントの生存率の比較。そして症例をケーススタディに、患者さんとの信頼の築きから、治療へのアプローチをどのように行うのか学べるコンテンツです。
こんな方におすすめ
●これからインプラント治療を取り入れる先生
●インプラント治療において学びを得たい先生
●様々な症例を学びたい先生
※8020推進財団より引用
https://www.8020zaidan.or.jp/achieve/future.html
※2厚生労働(令和4年)より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf
※3 厚生労働省(平成28年)より引用 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-01.pdf
※4「Straummann 2020 Annual Report」より引用
https://www.straumann.com/content/dam/media-center/group/en/documents/annual-report/2020/2020_Straumann_Annual_Report.pdf
※5 独立行政法人国民生活センター「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか」より引用https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20190314_1.pdf
※6 医療施設調査 平成29年医療施設(静態・動態)調査 上巻 より引用
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003289820
歯科衛生士ライター:古家
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