講師紹介 今村 大二郎

  • 今村 大二郎
  • 医療法人社団 精密審美会 表参道しらゆり歯科
  • 院長
  • 総合精密診療を掲げる歯科医院で院長として日々診療を行う傍ら、株式会社TSL クリンチェック代行・インビザライン導入支援 部門担当として、主に一般開業医向けに矯正治療導入支援やインビザライン治療の質の向上のための代行業務を行なっている。
  • プロフィールページ

こんな方におすすめ

  • 重度叢生を非抜歯で治療したい矯正歯科医師
  • 遠心移動におけるマイクロインプラントの活用を学びたい医師
  • 患者コンプライアンス低下時のクリンチェック再計画を知りたい医師

動画の紹介

インビザライン治療の中でも難易度の高い、前歯1本分のスペース不足(重度叢生)を非抜歯で治療した症例を徹底解説します。ワイヤー矯正で抜歯が考慮されるケースを、健康な歯を抜かずに解決する手法は必見です。

【非抜歯成功の秘訣】

✅ マイクロインプラントを活用した強固な固定源の確保。 

✅ 前歯の唇側傾斜抑制を最優先したクリンチェックの細かな修正テクニック。 

✅ 下顎の強い叢生に対するプレシジョンカットの適切な設置位置(剣歯ではなく4番へ)の考察。

治療初期に患者さんのコンプライアンス低下によりマウスピースが適合しなくなった場合のリファイメント再計画や、最終的な歯槽骨の状態を考慮した**歯根の傾斜(トルク)コントロールの考え方など、臨床で直面する課題解決のノウハウが詰まったコンテンツです。

動画内容

重度叢生を非抜歯で挑む!インビザライン遠心移動の高度な計画と管理

本動画では、前歯1本分に相当する重度の叢生と、特に下顎前歯部の舌側転位を伴う症例に対し、インビザラインとマイクロインプラント(アンカレッジ)を用いた非抜歯・上下顎遠心移動の治療プロセスを詳細に解説します。従来の治療方針では抜歯が一般的とされるケースを、いかに健康な歯を温存して改善したかという視点で、具体的なクリンチェック(ClinCheck)修正のノウハウを提供しています。

■ 初回クリンチェック計画の徹底事項

治療の安定性を確保するため、初回処方書には以下の重要事項が明記されました。

  1. 正中線の基準:下顎中切歯近心を基準とする。
  2. IPR(歯間隣接面削合)の保留:リファイメントの修正幅を確保するため、初回ではIPRを設定しない。
  3. 前歯の唇側移動の禁止:特に下顎前歯部において、現在の位置より唇側に移動しないよう厳命。これは歯槽骨からの逸脱(デヒセンス/フェネストレーション)を防ぐための重要な指示です。

術者は、シミュレーションで頻繁に見られる前歯のフレア(唇側拡大)を防ぐため、3Dコントロールで臼歯の遠心移動量を増やし、歯列全体が舌側で収束するよう修正を加えました。その結果、アライナー枚数は当初の67枚から73枚に増加しましたが、安全な移動と理想的な最終位置を優先しました。

■ マイクロインプラントの活用とプレシジョンカットの設定

強固な固定源としてマイクロインプラントを使用するにあたり、ゴムをかけるためのプレシジョンカットの位置に工夫が見られました。

特に左下顎では、剣歯(3番)の近心回転と正中方向への偏位が強いため、剣歯にプレシジョンカットを設定すると、ゴムが歯茎に押し当たり炎症や潰瘍を引き起こすリスクが高いと判断。このリスクを回避するため、左下顎のみプレシジョンカットを第一小臼歯(4番)に設定しました。これは、単に力を加えるだけでなく、患者さんの口腔組織の保護を考慮した高度な計画です。

■ 患者コンプライアンスとリファイメント再計画

この症例では、治療初期に患者の装着時間不足(コンプライアンスの低下)により、アライナーの適合不良が発生。臼歯部の移動が計画通りに進まず、前歯の叢生改善に至る前にリファイメントが必要となりました。

術者は、単に途中までの移動を認めるのではなく、「前回計画していた遠心移動量が達成されていないため、現在の位置から再度遠心移動を計画し直すこと」を指示。1枚あたりの移動量を減らすことで確実性を担保し、アライナー枚数はさらに増加(82枚)しましたが、確実に目標を達成するプランに修正しました。

■ 最終的な歯根(トルク)コントロールの考え方

最終的に、特にスペースが完全に閉鎖していた左上側切歯(2番)は、叢生を解消したものの、わずかに舌側傾斜した状態でフィニッシュしました。術者は、この位置をあえて修正しない判断を下しています。その理由として、元々歯がなかったエリアの歯槽骨の厚みが薄いことを挙げ、無理に歯根を唇側に起こす(トルクをかける)ことで、かえって歯槽骨を破壊し、後年の後戻りや歯周病リスクを高めることを懸念したためです。機能と清掃性の改善、そして骨の安全性を最優先したフィニッシュの考え方は、長期的な予後を重視する臨床の視点を示しています。

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