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2026年7月15日、厚生労働省の「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」(第6回)で、中間報告(案)が示されました。主な論点は、歯科衛生士の需給推計と、歯科医師が発行する手順書に基づき、研修を受けた歯科衛生士が歯科診療の補助を行う仕組みの検討です。[2][3]
院長が押さえたいのは、将来の人数を示す推計と、自院の採用可能性は同じではないこと、検討中の仕組みと現在の業務上のルールは区別することです。本記事では、公表資料の内容を整理したうえで、採用計画、新人教育、復職支援について今から取り組める対応策を紹介します。
中間報告(案)は、制度の施行を通知する文書ではありません。
第6回資料では、手順書に基づく診療補助に関する研修制度や実施体制などは、今後の検討事項とされています。この資料だけを根拠に、新たな行為を開始したり、診療報酬の算定・届出が変更されたと判断したりしないでください。[3]
この記事で整理すること
- 歯科衛生士の需給推計と、数字を読む際の注意点
- 手順書に基づく歯科診療の補助について、示された方向性と未確定の事項
- 新人教育・就業継続・復職支援に関する課題
- 院長が自院の採用・教育体制を見直すための具体策
背景
検討会はいつ、何を議論してきたのか
「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」は、2024年12月25日に第1回が開催されました。その後、2025年2月25日、7月30日、12月1日、2026年3月9日に議論が重ねられ、第6回の2026年7月15日に中間報告(案)が提示されています。[1]
中間報告(案)は、2040年にかけて高齢者の在宅医療や口腔健康管理のニーズが増加する一方、生産年齢人口が減少することを背景に挙げています。歯科医療の質を確保しながら提供体制を維持するため、歯科衛生士の必要数と業務のあり方を検討する位置づけです。[3]
数字で見る歯科衛生士の現状
中間報告(案)と2024年の衛生行政報告例で確認できる主な数字は、次のとおりです。[3][4]
- 免許登録者数:326,651人(2024年)
- 就業歯科衛生士数:149,579人(2024年末)
- 免許登録者数に対する就業者数の割合:45.8%
- 就業先が診療所である割合:90.6%(就業者の135,499人)
ただし、45.8%は免許登録者数と就業者数の比率です。差に相当する人数を、そのまま「復職する意思があり、地域の求人に応募できる人」とみなすことはできません。この数字だけでは、応募が集まらない原因や、自院で採用できる復職希望者の人数は分かりません。採用計画では、地域の求人状況や勤務条件も別に確認する必要があります。
院長が押さえるべき3つのポイント
ポイント1 需給推計は「不足が固定される」とは言い切っていない
中間報告(案)の需給推計は、就業状況や歯科医療需要などの前提を変えた試算です。主な数値を、対象年と条件を分けて整理します。[3]
表が画面に収まらない場合は、左右にスクロールしてご覧ください。
| 区分 | 対象年 | 推計人数 | 主な前提 |
|---|
| 供給:基本の推計 | 2034年 | 約18万4千~18万7千人 | 近年と同様の就業状況などを仮定 |
|---|
| 供給:就業状況が改善する推計 | 2034年 | 約18万9千~24万6千人 | 年代別の就業者率が改善する複数のシナリオ |
|---|
| 需要:基本の推計 | 2035年 | 約18万8千人 | 患者数や歯科医師数との関係などから必要数を推計 |
|---|
| 需要:ニーズ増と効率化を考慮 | 2035年 | 約19万~19万4千人 | 在宅歯科医療・指導管理等のニーズ増と、3%または5%の業務効率化を仮定 |
|---|
歯科衛生士の供給・需要推計と主な前提出典:中間報告(案)の本文・参考資料。人数は概数です。供給と需要では対象年が異なり、各行の数値を単純に差し引いて過不足を確定することはできません。
供給側の改善シナリオには、20歳代の就業者率を75%または80%とするもの、30~50歳代を約70%とするもの、20歳代80%と30~50歳代約70%を組み合わせるものがあります。これらは別々の仮定であり、全条件の同時達成を一律に見込んだ数字ではありません。
中間報告(案)は、就業状況が改善すれば供給が需要を上回る可能性に言及する一方、前提条件による幅や地域差も挙げています。全国全体の推計が均衡しても、自院の地域で必要な時間帯に採用できるとは限りません。また、3%・5%の効率化は需要推計上の仮定であり、各医院に課された達成目標ではありません。[3]
ポイント2 「手順書に基づく歯科診療の補助」は検討段階
中間報告(案)は、看護師の特定行為を参考に、歯科医師が発行した手順書に基づき、研修を受けた歯科衛生士が歯科診療の補助を行う仕組みを検討する方向性を示しています。手順書に基づく一定の判断を想定し、理解力・思考力・判断力と専門的な知識・技能の必要性を挙げています。[3]
例示されているのは、訪問歯科診療や病院等で、患者の呼吸や口腔・咽頭部の状態を判断して吸引を行うことなどです。ただし、資料中の例示は、個々の行為を新たに認める実施通知ではありません。手順書を作れば独立した診断や処置ができる、という意味ではありません。
研修制度、研修施設、研修期間、実施主体、関係団体・学会の認定制度の活用などは、引き続き検討が必要とされています。対象行為や実施条件は今後の公式資料で確認し、院内教育を行うことと、新たな業務を開始できることを分けて考える必要があります。[3]
なお、2025年6月20日には「歯科衛生士による浸潤麻酔の実施に向けた研修プログラム(例)令和7年度版」が別途通知されています。この通知は、歯科医師の指示と患者・担当者の状況に応じた個別判断を求めています。既存の研修資料と、中間報告(案)で検討されている枠組みは区別してください。[5]
ポイント3 新人教育・就業継続・復職支援も課題になっている
中間報告(案)は、卒業後の就労支援、新人歯科衛生士の教育体制、結婚・出産等に伴う離職、復職支援などを課題として整理しています。18歳人口の減少を背景に、養成施設の新設だけでは対応しにくいとの意見も記載されていますが、養成施設の新設を一律に否定する決定ではありません。[3]
柔軟な働き方を支える業務分担や診療所の機能分化・大規模化等も、検討する事項として挙げられています。すべての医院に同じ体制変更を求めるものではなく、自院の患者構成、スタッフの希望、地域での役割を踏まえた検討が必要です。
医院経営、スタッフ教育、患者説明への影響
以下は、公表資料を踏まえたORTC編集部の実務上の提案です。中間報告(案)が各医院に新たな義務として求めている事項ではありません。
医院経営への影響
全国の歯科衛生士数や歯科医師との人数比から、自院の必要人数や人件費の増加を直接決めることはできません。院長と採用担当者で、診療内容、予約枠、訪問診療の有無、時間帯別の配置を確認し、人数だけでなく実際に確保できる勤務時間で不足を捉えることを提案します。
業務を見直す際は、診療補助、記録、器具準備、受付との連携などに使っている時間を整理し、資格・能力に応じた分担を検討します。採用費、教育担当者の時間、教材費、代替要員の費用まで含めて収支を試算し、売上の増加と利益の増加を同一視しないことが重要です。
スタッフ教育への影響
院内教育では、手技を覚えるだけでなく、「どの状態で歯科医師へ報告するか」「どこで処置を止めて確認するか」を共有しておくことを提案します。症例の振り返りや確認項目の文書化は、現在の業務範囲でも取り組める準備です。
一般的な学習動画の視聴と、将来設けられる可能性のある制度上の研修要件は別です。学習時間を確保しつつ、制度上必要となる研修が示された場合は、その対象者・内容・修了条件を改めて確認します。
患者説明への影響
現在の診療でも、患者さんに「誰が、どのような役割で対応するか」を伝え、疑問を歯科医師へ確認できる流れを整えておくとよいでしょう。将来、制度が具体化した際は、実際の実施条件と受講・修了状況に沿って説明内容を更新します。未確定の認定や、受けていない研修を取得済みのように案内しないことが前提です。
具体的な対応策
1 勤務体制と、本人が希望する働き方を確認する
院長と責任者が、勤務時間、担当業務、習得状況、代替できる業務を整理します。働き方については、本人が共有を希望する範囲で確認し、既に相談されている休職・勤務変更などを配置計画に反映します。
年齢から結婚・出産の予定を推測し、離職時期を一覧化する方法は避けます。必要なのは私生活の予測ではなく、勤務上の希望を相談できる仕組みと、欠員時にも対応できる体制です。個人情報は業務上必要な範囲で扱い、共有先を限定します。
2 新人教育の「型」を文書化する
たとえば、入職1か月・3か月・6か月の到達目標、指導担当者、確認方法を1枚にまとめます。期間は一律の基準ではなく、経験や勤務日数に合わせて調整します。
教育担当者だけに任せず、院長が指導時間と担当患者数を調整し、月次で習得状況を確認する運用にすると、計画と実態のずれを修正しやすくなります。採用時には、作成した教育計画を応募者への説明にも活用できます。
3 学ぶ時間を「シフトに入れる」
次のシフト作成時に、勤務時間内の学習枠を確保することを提案します。たとえば月1回30分を使い、テーマを一つに絞って教材の視聴や症例の振り返りを行い、翌月までに実践することを決めます。回数と時間は運用例であり、制度上の要件ではありません。
医院が参加を指示する研修や、事実上参加が義務づけられている研修は、労働時間として扱います。勤務表への反映、実際の時間の記録、賃金計算まで連動させてください。[6]
4 復職・短時間勤務の受け皿を設計する
週2日、午前のみなど、医院で対応できる勤務条件を先に整理します。復職希望者には、一律に即戦力を求めるのではなく、経験と現在の習得状況を確認し、教育期間と担当業務を調整する方法が考えられます。
勤務形態が増える場合は、引き継ぎ、記録、急な欠勤への対応も併せて設計します。採用可能な人数は地域の応募状況から判断し、免許登録者数と就業者数の差を、そのまま自院の採用候補者数として見込まないようにします。
5 制度情報は一次情報で追う
確認担当者を決め、厚生労働省の検討会ページに追加される資料や議事録を確認します。新たな発表があった際は、「検討会の意見」「報告書」「告示・通知等」を区別し、対象者、適用日、必要な手続きの記載を確認してから院内へ共有します。[1]
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まとめ
中間報告(案)を読む際は、全国の需給推計と自院の採用環境、検討中の制度と現在の実施条件を分けて捉えることが重要です。数字の大きさだけで採用方針を決めたり、将来の枠組みを先取りして業務を変更したりすることは避けましょう。
ORTC編集部は、まず勤務体制の把握、新人教育の文書化、勤務時間内の学習、復職者を受け入れる仕組みの整備から着手することを提案します。制度の動向を確認しながら、自院で実行できる改善を一つずつ進めることが、現実的な準備になります。
参考情報・出典
- 厚生労働省「歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」。開催経過・公表資料の一覧。
- 厚生労働省「第6回 歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会」。2026年7月15日開催。
- 厚生労働省「資料1 歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会 中間報告(案)」(PDF)。第6回資料。本文1~5ページ、需給推計の参考資料。
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」。2024年末の就業歯科衛生士数・就業場所別内訳。
- 厚生労働省「歯科衛生士による浸潤麻酔の実施に向けた研修プログラム(例)令和7年度版」について(PDF)。2025年6月20日、医政発0620第8号。
- 厚生労働省「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」(PDF)。2026年6月版。
本記事は2026年9月22日に確認した公表資料に基づいています。第6回資料は中間報告(案)です。業務の実施条件や制度上の手続きについては、その後の公式資料もご確認ください。