2026年診療報酬改定|歯科保険算定の実務
2026年(令和8年)6月施行の歯科診療報酬改定では、小児口腔機能管理料と口腔機能管理料が90点・50点の2区分に再編され、歯科衛生士による口腔機能実地指導料46点が新設されました。
ただし、「増点されたから90点」「歯科衛生士が研修を受けたから46点」と判断するのは危険です。算定可否は、対象患者、診断・評価、検査、管理計画、写真、患者文書、診療録、施設基準、届出、実施記録を分けて判定する必要があります。
30秒で分かる結論
小児口腔機能管理料1は90点、2は50点。口腔機能管理料1は90点、2は50点。口腔機能実地指導料は46点です。
点数だけでは算定できません。小児は評価項目数と写真管理、成人は口腔機能低下症の診断と区分1に関係する検査、実地指導料は研修済み歯科衛生士に加えて施設基準と地方厚生局への届出が重要です。
誤解1
旧60点の患者は全員90点になる
改定後は90点と50点に分かれます。対象区分の判定が必要です。
誤解2
管理料2なら検査・評価は不要
管理料2でも学会基準に基づく診断と管理計画が必要です。
誤解3
研修済み歯科衛生士がいれば46点
施設基準、届出、歯科医師の指示、文書、記録も必要です。
口腔機能管理料・実地指導料の算定可否を一覧で確認
| 算定項目 | 点数 | 主な対象・区分 | 見落としやすい要件 |
|---|---|---|---|
| 小児口腔機能管理料1 | 90点 | 18歳未満の口腔機能発達不全症患者で、評価項目3項目以上 | 同意、管理計画、文書提供、診療録、初回写真と3回算定ごとの写真管理 |
| 小児口腔機能管理料2 | 50点 | 18歳未満の口腔機能発達不全症患者で、評価項目2項目 | 2項目への該当だけでなく、学会基準による診断と継続管理が必要 |
| 口腔機能管理料1 | 90点 | 50歳以上の口腔機能低下症患者で、指定検査のいずれかを算定 | 口腔機能低下症の診断と、90点区分に該当する検査料の算定を分けて確認 |
| 口腔機能管理料2 | 50点 | 口腔機能低下症患者のうち、管理料1に該当しない患者 | 「検査なしでよい区分」ではない。診断・計画・説明・記録は必要 |
| 口腔機能実地指導料 | 46点 | 口腔機能の発達不全又は低下を有する患者 | 研修、歯科医師の指示、文書、業務記録、施設基準、届出受理 |
小児口腔機能管理料と口腔機能管理料は、歯科疾患管理料又は歯科特定疾患療養管理料を算定した患者に対し、同意を得て管理計画を作成し、管理を行った場合に月1回算定する構造です。実際の請求では最新の点数表、留意事項通知、疑義解釈を確認してください。
小児口腔機能管理料90点・50点の算定要件
小児口腔機能管理料は、18歳未満で、関係学会の診断基準により口腔機能発達不全症と診断された患者に対し、正常な口腔機能の獲得を目的として継続管理を行う評価です。
90点と50点を分ける評価項目数
口腔機能の評価項目に3項目以上該当する患者は小児口腔機能管理料1の90点、2項目に該当する患者は小児口腔機能管理料2の50点です。評価項目数だけを数えるのではなく、診断基準に基づく診断と、患者ごとの管理計画が前提です。
返戻・査定リスクを下げる記録セット
- 口腔機能の評価結果
- 患者又は家族の同意
- 一連の口腔機能管理計画
- 患者・家族へ提供した文書と、その写しの診療録添付
- 管理内容の診療録記載又は管理記録の添付
- 口腔外又は口腔内カラー写真の撮影・保存
写真は「必要に応じて」ではありません
小児口腔機能管理料の初回算定日には、口腔外又は口腔内カラー写真を必ず撮影します。その後も、少なくとも当該管理料を3回算定するごとに1回以上撮影し、診療録へ添付するか、デジタル画像を電子媒体に保存・管理します。
成人の口腔機能管理料90点・50点の算定要件
口腔機能管理料は、50歳以上で、歯の喪失、加齢、全身疾患等による口腔機能低下症と診断された患者に対する継続管理を評価する項目です。関係学会の基準では、複数の下位症状を評価して口腔機能低下症を診断します。
管理料1の90点に関係する検査
口腔機能管理料1は、口腔機能低下症と診断された患者のうち、咀嚼能力検査、咬合圧検査、口腔粘膜湿潤度検査、舌圧検査又は口腔細菌定量検査のいずれかを算定した患者が対象です。
管理料2の50点は「評価を省略できる区分」ではない
口腔機能管理料2は、口腔機能低下症と診断されているものの、管理料1に該当しない患者を対象とします。管理料1で指定された検査料を算定していないことと、診断に必要な評価を行っていないことは同じではありません。
算定判断を2段階に分ける
第1段階で「口腔機能低下症と診断できるか」を確認し、第2段階で「90点の管理料1に該当する検査を算定しているか」を確認します。この順序にすると、50点を検査・診断不要の簡易区分と誤解しにくくなります。
口腔機能実地指導料46点|施設基準と届出の自己監査
口腔機能実地指導料は、研修を受けた歯科衛生士が主治の歯科医師の指示の下で、口腔機能発達不全症患者への機能獲得のための指導、又は口腔機能低下症患者への回復・維持・向上のための指導を行った場合に、月1回算定する46点の項目です。
研修済み歯科衛生士の配置は、小児口腔機能管理料や口腔機能管理料そのものの必須条件ではありません。研修、施設基準、届出が直接関係するのは、口腔機能実地指導料46点です。
算定開始前の8項目チェック
- 所定内容を含む研修を受講した歯科衛生士を1名以上配置している
- 口腔機能実地指導を実施する時間を定めている
- その時間に使用する歯科用ユニットを確保している
- 指導を行う歯科衛生士の処遇改善に取り組んでいる
- 地方厚生局へ施設基準を届け出て、受理状況を確認している
- 歯科医師が歯科衛生士へ指示し、指示内容の要点を診療録へ記載している
- 患者へ指導内容を文書で提供し、その写しを診療録へ添付している
- 歯科衛生士が歯科医師への報告と業務記録の作成を行っている
患者文書の提供頻度
指導内容の文書は初回指導時に提供します。その後も、指導内容に変化があった場合や改善が認められない場合等に必要に応じて提供し、変更がない場合でも少なくとも6か月に1回以上は文書で提供します。
研修要件の経過措置
令和9年5月診療分までの届出では、研修受講歴の代わりに、令和9年5月までに受講予定である旨を様式へ記載する取扱いが示されています。令和9年6月診療分以降も算定を継続する場合は、研修受講歴を記載して施設基準を再度届け出ます。
研修は原則として対面ですが、出席確認、研修時間、質疑対応、理解度確認等を担保できる形式であればオンライン受講も認められています。録画を視聴しただけで自動的に要件を満たすとは判断せず、研修主催者と修了証の記載内容を確認してください。
このケースは算定できる?実務判定表
| ケース | 判定 | 理由・追加確認 |
|---|---|---|
| 旧60点を算定していた患者を、評価せず一律90点で請求する | 不可 | 改定後の90点・50点の区分要件に基づく判定が必要 |
| 小児の評価項目は3項目だが、初回写真を撮影していない | 要件未充足 | 初回算定日のカラー写真撮影・保存が必要 |
| 成人で口腔機能低下症と診断し、指定検査のいずれかを算定した | 管理料1を検討 | 年齢、管理計画、同意、文書、診療録等の他要件も確認 |
| 研修済み歯科衛生士はいるが、口腔機能実地指導料の届出をしていない | 不可 | 施設基準を満たし、地方厚生局への届出が必要 |
| 訪問歯科衛生指導料と同日に、要件を満たす口腔機能実地指導を実施した | 算定可能 | 実際の指導内容、歯科医師の指示、文書、報告・記録を残す |
| 歯科口腔リハビリテーション料3と同じ指導・訓練を実施した | 重複算定不可 | 指導・訓練内容が重複する場合、口腔機能実地指導料は算定できない |
点数差を売上ではなく利益で判断する
旧60点の対象患者が新しい管理料1の要件を満たす場合、1回当たり30点、金額換算で300円の増加です。月20件で6,000円、月100件で30,000円の診療報酬増となります。
口腔機能実地指導料46点を月20件算定した場合は920点、9,200円です。ただし、これは売上であり利益ではありません。研修費、歯科衛生士の指導時間、ユニット確保、文書作成、写真管理、レセプト確認、処遇改善に伴う費用を差し引いて評価する必要があります。
ORTC編集部の見解
口腔機能管理は、対象患者を増やす施策から始めるより、問診、評価、診断、計画、説明、指導、記録、再評価、請求確認を一つの標準業務にする方が、安全かつ再現性があります。算定件数より先に、適正算定できる院内フローを設計することが重要です。
院内導入を止めない役割分担
今月実施する院内監査
- 直近1か月の小児・50歳以上患者から候補患者を10名抽出する
- 診断、評価項目、検査、管理計画、文書、写真を患者別に確認する
- 口腔機能実地指導料の研修、施設基準、届出受理状況を確認する
- 算定できなかった理由を「患者要件」「記録」「院内体制」「届出」に分類する
- 翌月までに、最も件数の多い未整備項目を一つ改善する
患者・保護者への説明例
小児患者の保護者への説明例
「お口の成長は、歯だけでなく、食べる、飲み込む、話す、唇を閉じるといった機能も含めて確認します。今回、継続して見た方がよい項目が認められました。評価結果と写真を記録し、成長に合わせた練習方法をご説明します。」
成人患者への説明例
「口腔機能低下症は、噛む力、舌の力、口の乾燥、飲み込みなど複数の機能を評価して診断します。結果に応じて、口腔機能の訓練、食事上の工夫、義歯や歯科治療を含む管理計画を作り、定期的に再評価します。」
口腔機能管理料のよくある質問
Q.2026年改定で、口腔機能管理料は全員90点になりましたか。
A.全員ではありません。小児口腔機能管理料と成人の口腔機能管理料は、いずれも要件により90点と50点に分かれます。
Q.小児口腔機能管理料2は、評価項目が2項目なら算定できますか。
A.評価項目数だけでは算定できません。18歳未満で口腔機能発達不全症と診断され、管理計画、同意、文書、診療録、写真等の要件を満たす必要があります。
Q.口腔機能管理料2は、検査をしなくても算定できますか。
A.口腔機能低下症の診断に必要な評価を省略できるわけではありません。管理料1に指定された検査料を算定していない場合でも、学会基準に基づく診断と管理計画が必要です。
Q.口腔機能実地指導料46点は、研修を受ければすぐ算定できますか。
A.研修だけでは算定できません。歯科衛生士の配置、指導時間、歯科用ユニット、処遇改善、地方厚生局への届出、歯科医師の指示、文書提供、記録等を確認します。
Q.口腔機能実地指導料の研修はオンライン受講でもよいですか。
A.出席確認、研修時間、質疑対応、理解度確認等が担保されたオンライン形式は認められます。研修主催者が施設基準上の要件を満たす内容として実施しているかを確認してください。
まとめ|点数を知るだけでなく、算定できる状態まで作る
2026年改定では、小児・成人の口腔機能管理料が90点と50点に再編され、口腔機能実地指導料46点が新設されました。しかし、点数を把握しただけでは適正算定にはつながりません。
対象患者、診断、評価、検査、管理計画、患者文書、写真、歯科医師の指示、歯科衛生士の記録、施設基準、届出、併算定を一続きの業務として確認してください。算定漏れを減らすことと、無理な請求を避けることは同時に実現できます。
口腔機能管理を院内で実装するためのORTCコンテンツ
制度の数字だけでなく、診断・説明・スタッフ教育・院内導入まで進めたい歯科医院向けに、記事と動画を用意しています。
研修の対象項目、施設基準上の研修要件への適合、修了証の取扱いは、各申込ページ及び主催者発行資料で必ず確認してください。
エビデンス・一次情報
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)」
- 厚生労働省「歯科診療報酬点数表に関する事項」
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その9)」
- 関東信越厚生局「特掲診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)」
- 日本歯科医学会「口腔機能低下症に関する基本的な考え方」
- 日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
制度情報の最終確認日:2026年7月31日。診療報酬の取扱いは、訂正通知、追加の疑義解釈、地方厚生局の案内等により更新される場合があります。実際の請求時には、最新の告示、通知、疑義解釈及び所管の地方厚生局等の案内をご確認ください。
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