歯科診療において欠かせない「歯科用バキューム」「吸引装置」。その役割は単なる唾液の除去にとどまらず、エアロゾルの拡散防止や感染予防にまで及びます。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、感染対策機器としての重要性が再認識されています。本記事では、歯科用バキュームの定義・種類から、選び方やメンテナンス、実際の臨床活用例までを網羅的に解説します。歯科衛生士・歯科医師が明日から実践できるヒントが満載です。
歯科用バキューム・吸引装置とは?

「歯科用バキューム」とは、治療中に口腔内外で発生する唾液、血液、切削片、浮遊粉塵、エアロゾルなどを除去するための吸引装置の総称です。患者の誤嚥防止や視野確保だけでなく、感染予防という重要な役割を担っています。
歯科用バキュームの代表的な種類
種類 | 設置場所 | 主な用途 | 特徴 |
口腔内バキューム | 口腔内 | 唾液・血液・説削粉の吸引 | 小型で操作性に優れる |
口腔外バキューム | 口腔外 | 飛沫・エアロゾルの吸引 | 感染対策に効果あり やや大型 |
それぞれの機能と特長を深掘り

口腔内バキュームの機能
唾液・血液の除去
切削片の吸引
根管洗浄後の排液処理
操作性に優れ、チェアサイドでの治療効率を高めます。小児歯科や補綴治療の他、幅広い診療科で活用されています。
口腔外バキュームの機能
エアロゾル(細菌・ウイルスを含む飛沫)の吸引
フィルター(HEPAなど)で空気を浄化
治療室の空気環境を保つ
感染対策の一環として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降急速に普及。義歯調整やスケーリング、クラウン除去時などに特に有効です。
感染対策・エアロゾル対策における重要性

エアロゾルとは、歯科治療中に発生する微細な飛沫粒子のこと。スケーラーやタービン、エアシリンジ使用時に大量に発生し、空気中を長時間漂うため、感染リスクが高まります。
歯科用バキュームによるエアロゾル対策の実際
口腔内バキューム:患者の呼気・唾液を効率的に除去
口腔外バキューム:診療台周囲の空中浮遊エアロゾルを即座に吸引
他の感染対策と併用すべき対策
高性能フィルター付き空気清浄機
定期的な換気(窓の開閉/強制換気)
術前のうがい(ポピドンヨードなど)
個人防護具(PPE)着用の徹底
歯科医療従事者にとっての活用シーン
歯科医師と歯科衛生士のそれぞれの視点から注意するべき点をまとめました。

歯科衛生士の視点から
超音波スケーリング時の併用:飛沫の拡散を最小限に
咽頭反射の強い患者への対応:唾液吸引で不快感を軽減
仮封時の乾燥維持:操作性向上に寄与
歯科医師の視点から
形成時の視野確保:タービン使用時に粉塵を吸引し治療精度向上
セメント除去時の飛沫対策:義歯やインレー調整時に口腔外バキュームが活躍
抜歯後の止血補助:持続的な吸引で視野確保とドライソケット予防
メンテナンスと正しい使い方
清掃やメンテナンスで気をつけるべき点は以下のとおりです。

毎日行うべき清掃
吸引チューブ内の洗浄(専用の洗浄液推奨)
フィルターの確認と水洗い
接触部分の消毒(アルコール・次亜塩素酸ナトリウムなど)
定期的に行うべきメンテナンス
月に1回の内部洗浄(高圧洗浄など)
HEPAフィルターや集塵袋の交換(推奨は半年~1年)
機器選びのポイント
機器を購入する際は以下の点を参考にしてみましょう。
視点 | チェックすべき項目 |
吸引力 | m³/h で表示。スケーラー併用時は高吸引力が望ましい |
静音性 | 60dB以下なら快適な診療が可能 |
フィルター性能 | HEPA搭載でウイルスレベルの粒子を除去可能 |
サイズ・移動性 | コンパクト設計で複数チェア間を移動できると便利 |
メンテナンス性 | 洗浄・交換がしやすい設計が長期的に有利 |
まとめ 明日から使える感染対策としての吸引装置
歯科用バキュームや吸引装置は、唾液や粉塵の除去だけでなく、院内感染対策という観点でも極めて重要な役割を担います。とくにエアロゾルを発生させる超音波スケーラーや切削器具の使用時に、口腔外バキュームの導入は有効です。
また、感染症の拡大を防ぐためには、装置の選定・正しい運用・メンテナンスを徹底することが必須です。さらに、フィルター交換や院内の換気、患者のうがい誘導、PPEの着用などを組み合わせた“多層的感染防御”が望まれます。感染対策を徹底して医院のレベル向上に役立てましょう。
実践的な活用チェックリスト
□形成や切削中は、術者が常に明瞭な視野を得られるよう吸引体勢を確認
□ スケーリング時には口腔外バキュームを併用して、飛沫拡散を最小限に抑制
□処置終了後は速やかにチューブ洗浄を行い、翌日の吸引性能を確保
院内感染対策の一環として、吸引装置の使用を診療マニュアルに組み込みましょう。感染対策や機器の導入で迷った際はORTCのコンテンツをぜひ参考にしてください。

参考文献・参照元
日本歯科医学会連合「歯科医療機関における感染管理マニュアル 2022年版」
厚生労働省「歯科における院内感染対策マニュアル」
DÜRR DENTAL カタログ資料
医学界新聞プラス|「医療関連感染を引き起こす飛沫とエアロゾル」2020年掲載
歯科衛生士ライター 東雲あや
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