講師紹介 伊藤高史

- 伊藤高史
- いとう歯科医院 院長
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・訪問診療で義歯修理を担う歯科医師
・即日修理を学びたい若手歯科医師
・義歯トラブル対応を強化したい院内技工士
総義歯が真っ二つに破折しても、補強線を用いれば90分で修理できる——本動画では、石膏固定から半丸線の埋入、即重レジン充填、咬合調整までの一連のステップを実演。薄い床への配慮や石膏の盛り方、安全に外すコツ、破折を招いた前歯干渉の診断まで、臨床の「なぜ」を丁寧に解説します。要所を押さえれば、患者を待たせず快適な再装着が可能です。補強線の種類選択や刻みを入れて保持力を上げるテクニック、粘膜面を傷つけない溝掘りの深さなど、すぐに臨床で再現できるノウハウが満載です。
【症例概要】
70代女性、長期使用していた総義歯が乗継部で完全破折。粘膜適合と咬合は良好のため、補強線を挿入した即日修理を計画した。
【治療手順】
1 石膏固定と仮止め
公外面→唇頬面の順に磯コンパウンドで仮接着し、位置ずれを防止。深いアンダーカット部は紙粘土で埋め、義歯を安全に取り外せるよう配慮。
2 溝掘りと補強線作製
破折線をまたぐように4本の半丸線を配置。ニッパーで刻みを入れて機械的保持を高める。新義歯を薄く加工する場合は見た目と強度のバランスを考慮し、頬側の補強は避ける。
3 レジン充填
即重レジンで溝を一気に充填し、余剰を素早く除去。硬化後、石膏をパチンと外せるよう事前の盛り付け量を最小限にしておくことが時短の鍵。 4 研磨と仕上げ
粘膜面を穿孔しないよう研磨圧を調節。薄床義歯では1点穿孔が痛みの原因となるため、光照射前後に再確認する。
【臨床の勘所】
・破折原因となる前歯部の高等干渉は、修理後の再破折を防ぐ最重要チェックポイント。
・半丸線は0.9mm前後が扱いやすく、刻み位置を変えることで湾曲部にもフィットさせやすい。
・石膏固定は“外す工程”まで想定して最小量を盛る。削り出し時間≒患者待機時間の短縮につながる。
【術後評価】
咬合調整後、咬合高径は維持されたまま安定。患者は午前中に来院し、昼食前には通常の咀嚼が可能となり高い満足度を示した。修理義歯は6か月の経過観察で再破折なく良好に機能している。
【まとめ】
半日での義歯修理を成功させる鍵は、破折線再現の精度と補強線の適切な配置にある。本動画で示された石膏操作と半丸線活用のコツを取り入れれば、義歯修理の成功率と患者満足度は大きく向上する。