講師紹介 伊藤高史

- 伊藤高史
- いとう歯科医院 院長
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義歯の破折修理の精度を高めたい歯科医師
補強線を用いた入れ歯修理の実践的な手技を学びたい臨床医
難易度の高い義歯修理症例への対応策を探している歯科医療従事者
本動画では、練馬区で多くの症例を手がけるいとう歯科医院の伊藤高史先生が、義歯の破折修理における補強線の重要性と具体的な手技を詳解します。
特に、真っ二つに割れた上顎義歯の修理プロセスを追うことで、仮止め、石膏固定、補強線挿入、即時重合レジンによる填入といった一連の流れが掴めます。単なる修理に終わらず、破折原因となった咬合の干渉を特定し調整する診断眼の重要性にも触れています。
このテクニックを習得すれば、入れ歯を半日で確実かつ簡単に修理でき、患者さんの早期のQOL回復に繋がります。日々の臨床に役立つ実践的な内容です。
本動画では、いとう歯科医院の伊藤高史先生が、豊富な臨床経験に基づいた破折義歯の確実な修理法を紹介しています。中心となるのは、単に接着するだけでなく「補強線」を組み込むテクニックです。
なぜ補強線が必要なのか? 義歯が破折した場合、瞬間接着剤や即時重合レジンのみで修理しても、咬合力によって再破折するリスクが非常に高いと伊藤高史先生は強調します。実際、そのような修理では1日も持たないケースが多いとのこと。補強線を組み込むことで、修理部の物理的な強度が飛躍的に向上し、長期的な安定性が得られます。
1.破折面の正確な合着: 割れた面を隙間なく合わせるのが最初のステップです。
2.仮止め: 以前は磯コンパウンドを使用していたものの、現在は技工用瞬間接着剤が推奨されています。特に、公蓋部だけでなく新側からも仮止めすることで、位置のズレを防ぎます。
3.石膏固定: 破折部が正確に合着した状態で、義歯を石膏に埋めて固定します。石膏の盛り方には工夫が必要で、新側や頬側に張り出しすぎないようにすることで、後の石膏からの取り外しが容易になります。アンダーカットがある場合は事前に紙粘土などで埋めておくとスムーズです。石膏除去時に義歯を再破折させないよう、慎重な操作や、必要に応じたエンジンでの削り出しといった安全策も紹介されています。
4.補強線用の溝形成: 石膏固定後、仮止めを除去し、破折線に沿って補強線を入れるための溝を形成します。症例によっては4箇所に溝を掘っています。
5.補強線の設置: 半円線などの金属線を加工し、溝に設置します。ニッパーで刻みを入れることで、この後のレジンとの機械的維持力を高める工夫が紹介されています。新側への補強線は審美性の観点から避ける場合もありますが、義歯の厚み(特に公蓋部が薄い場合)によって審美性への影響度が異なるといった考察も述べられています。
6.レジン充填と研磨: 即時重合レジンを用いて、補強線が設置された溝を埋めます。硬化後、石膏から義歯を取り外し、研磨を行い修理が完了します。
単に修理するだけでなく、なぜ義歯が破折したのか、その原因を究明することが再破折を防ぐ上で極めて重要です。この症例では、咬頭嵌合位において前歯部に強い咬合干渉があることが判明しました。原因に対し、咬合調整(干渉部の削合)を行うことで、根本的な解決を図っています。
この補強線を用いた修理法により、適合が良好で安定した義歯を半日という短時間で患者さんに戻すことが可能になります。これは患者さんの不便を最小限に抑え、高い満足度を得ることに繋がります。歯科医師にとっても、確実な修理技術は臨床の幅を広げ、信頼性を高める重要な要素となります。
本動画は、義歯破折という日常的な臨床における課題に対し、補強線を用いることでいかに確実かつ効率的に対応できるかを示す実践的なガイドです。修理手技の詳細から原因究明、そして咬合調整に至るまで、破折義歯の治療に必要な要素が網羅されています。