講師紹介 伊藤高史

- 伊藤高史
- いとう歯科医院 院長
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他院で新製した義歯を装着した患者から、「前歯の部分が分厚すぎて口元に違和感がある」と相談された際の対応症例です。
伊藤先生は、患者が有歯顎時代に「反対咬合」であったという背景に着目。標準的な義歯床の豊隆が、この患者にとっては過剰な圧迫感や突出感を生んでいると診断しました。
上顎前歯部の義歯床(フランジ)をわずか1〜2mm削合することで、劇的に患者満足度を向上させています。「気のせい」や「我慢」で片付けず、解剖学的背景を踏まえた微調整を行うことの重要性を説く内容は、日々の臨床ですぐに役立つ視点です。
本動画では、他院で作製された義歯の「前歯部が分厚くて気になる」という主訴に対し、患者個々の解剖学的背景を考慮して解決した症例が紹介されています。
患者さんは1ヶ月前に義歯を新製しましたが、上唇付近の膨らみに強い違和感を抱えていました。伊藤先生が注目したのは、患者が自身の歯があった頃に「反対咬合(受け口)」だったという事実です。
通常、反対咬合の患者は上顎前歯部が口蓋側に位置していた経緯から、標準的な被蓋咬合(シザーズバイト)を目指して義歯床や人工歯に豊隆を持たせすぎると、口元が不自然に突出し、「分厚い」と感じやすくなります。
「治療とは主訴(悩み)を解決すること」と定義し、患者の感覚を「気のせい」や「慣れの問題」として看過してはならないと先生は強調しています。
今回は、上顎前歯部の義歯床(フランジ)部分を1〜2mm程度削合し、厚みを減らすことで即座に患者の不満を解消しました。
当初は人工歯自体の削合も検討していましたが、床の調整のみで解決しました。わずか数ミリの差ですが、口腔感覚や顔貌においては決定的な違いを生みます。
逆に、抜歯後の吸収により口元が貧相に見えてしまう患者に対しては、義歯床に即時重合レジンを盛り足して豊隆を作ることで喜ばれるケースもあります。
このように、義歯前歯部の形態は、単なる維持安定だけでなく、患者の顔貌や自己イメージに直結するデリケートな部分です。
教科書的な理想形態にとらわれず、患者の「かつての顔」や「現在の感覚」に寄り添った柔軟な調整こそが、信頼される歯科医療の鍵となると解説しています。
